パートタイム労働法
パートタイム労働法(正式名称:短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)は、短時間労働者(1週間の所定労働時間が、同じ事業所内で働く通常の労働者に比べて短い労働者)の福祉の増進を図ることを目的に、1993年12月施行された。①事業主は短時間労働者に労働条件を明示すること ②通常の労働者(正社員)との均衡を考慮した処遇・労働条件を確保すること ③常時10人以上の労働者を使用する事業主は、短時間労働者に適用される就業規則を整備すること など、雇用管理改善等のための措置について定めている。
改正パートタイム労働法(2008年4月施行)
パート労働者は1,205万人にのぼり、うち女性が7割を占めている(総務省,2006)。増え続けているパート労働者の処遇改善を目的に、「パートタイム労働法の一部を改正する法律」(2008年4月1日施行)が定められた。改正のポイントは次の通り。
●労働条件の文書交付・説明義務(第6・13条)
①労働基準法により義務づけられている事項に加え、一定の事項(昇給,退職手当,賞与の有無)について、文書の交付等によって明示することを義務化する。
②雇い入れ後、パート労働者から求められたときには、待遇を決定するに当たり考慮した事項を説明することを義務化する。
●均衡のとれた待遇の確保の促進(第8・9・10・11条)
①正社員(通常の労働者)と同視すべきパート労働者を差別的に取扱うことを禁止する。
②①以外のパート労働者に対し、賃金・教育訓練については職務の内容、成果、意欲、能力、経験等を勘案することを努力義務化し、福利厚生施設の利用については機会提供を配慮することを義務化する。
●通常の労働者への転換の推進(第12条)
正社員への転換を推進する措置を講じることを義務化する。
●苦情処理・紛争解決援助(第19・21・22条)
①苦情は事業所内で自主的解決を図ることを努力義務とする。
②紛争解決援助の仕組みとして、都道府県労働局長による助言・指導・勧告、紛争調整委員会による調停手続を整備する。
大幅な改正になる一方で、企業の解釈に委ねる部分も多い。適切な処遇で働くことができる環境整備を実質的に行っていくことが望まれる。(2008.3)
改正パートタイム労働法(2015年4月施行)
「公正な待遇を確保し、また、納得して働くことができるよう」、2014年、一部改正された。改正のポイントは以下の4つ。
(1)正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者の対象範囲の拡大
職務内容や人材活用の仕組みが正社員と同じであれば、改正によって有期労働契約であっても差別的取扱いが禁止となった。
(2)短時間労働者の待遇の原則の新設
正社員との待遇の相違は、職務内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して、不合理なものであってはならない。
(3)パートタイム労働者を雇い入れたときの事業主による説明義務の新設
事業主は、パートタイム労働者を雇い入れたときに、賃金体系や教育訓練、福利厚生、正社員転換措置等々、雇用管理内容について説明しなければならない。
(4)パートタイム労働者からの相談に対応するための事業主による体制整備の義務の新設
相談担当者を決めて相談に対応させるなど、事業主は適切に対応するための体制を整備しなければならない。
その他、虚偽報告などに対する過料や、厚生労働大臣の勧告に従わない企業名の公表制度の創設等が定められた。(2014.5追記)