人権侵害救済機関
法令に基づいて設置される、行政による人権救済機関である。「国内機構の地位に関する原則(パリ原則)」(国連採択1993)は同機関の指針として、政府から独立し、人権に関して自らの権限で意見、勧告、提案等ができ、独立した財源をもち、多元的なメンバーにより構成されること等をあげている。これを踏まえ、日本政府は人権擁護推進審議会を設置し(1997)、答申に基づいて2002年「人権擁護法案」を国会に提出したが、いまだに設置は実現していない。
CEDAW(国連女子差別撤廃委員会)は上記法案に対し①公務員による人権侵害の救済が不充分、②機関の独立性欠如、③雇用・労働条件における女性差別救済の欠如を指摘し(第4,5次報告の最終見解2003年)、女性の人権保護・促進の権能を含む独立した国内人権機関を、期限を定めて設置するよう勧告した(第6次報告の最終見解2009年)。
人権侵害には司法による救済の道があるが、膨大な時間と費用がかかる。法務省に人権擁護局を置く現行の人権擁護委員制度(1948年創設)は、社会変化の下、女性・子ども・少数者・難民・受刑者・疾病感染者や元患者等が被る複雑な人権侵害に対処できない面がある。
迅速で実効性の高い人権侵害救済機関を早期に設立することが、国内外から求められている。
(2010.2)