高齢者虐待防止法

2005年11月、高齢者の虐待防止に関する国等の責務、保護措置、および養護者の支援措置等を定めた「高齢者虐待防止法」(正式名:高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)が成立し、2006年4月に施行された。この法律は、高齢者虐待について、①身体的虐待(身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えること) ②介護放棄(衰弱させるような著しい減食または長時間の放置、その他の高齢者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること) ③心理的虐待(著しい暴言または著しく拒絶的な対応、その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと) ④性的虐待(わいせつな行為をすること、またはわいせつな行為をさせること) ⑤経済的虐待(高齢者の財産を不当に処分すること、その他当該高齢者から不当に財産上の権利を得ること)と定義。主な保護措置として ①通報義務(発見者は速やかに市町村へ通報すること) ②立入調査(生命・身体に重大な危険を生ずるおそれがある場合、市町村は高齢者の住所または居所に立ち入って調査ができる) ③一時保護(生命・身体に重大な危険が生ずるおそれがある場合、市町村は迅速に一時保護を行う)などが規定された。また、介護疲れなどで虐待者となりやすい養護者の負担を軽減する措置として、相談及び指導・助言や高齢者を短期間養護する居室等の確保を、市町村に義務付けた。虐待されている高齢者のうち76.2%が女性、主な虐待者は「息子」(32.1%)が最も多いという実態(「家庭内における高齢者虐待に関する調査」2004 医療経済研究機構調査)が明らかになったが、虐待者・非虐待者間の力関係、家庭内での潜在化という点で高齢者虐待はDVと共通している。高齢者の尊厳保持のため、同法制度は一歩前進と言えるが、法整備とともに、ジェンダーの視点からの意識啓発も欠かせない。(2006.1)

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