月刊『We learn』(ウィラーン)

月刊『We learn』2003年1月号(No.603)

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特集: 

巻頭言
ジェンダー関係の急激な変化と反動ホーン/川嶋瑤子

【新企画】誌上アートギャラリィ
フォトエッセイ Jigsaw Puzzle 4/落合由利子

研究レポート
アフガニスタンの女性の現状と課題-妊産婦死亡を中心にして/池上清子

学習情報クリップぼ~ど
女性史講座-その時を拓いた女性たちの証言( 清瀬市男女共同参画センター)

シネマ女性学
『抱擁』
アメリカ映画(102分)/ニール・ラビュート監督
詩人の恋の謎を追って/松本 侑壬子

活動情報(1)
「おとなのための性教室」講演会
リプル~柔らかな共生をめざして/夏井留美子

活動情報(2)
アジアの女性の自立を支援する
WE21ジャパン/山澤和子

Women’s View
ジェンダーワーク事始め/綿谷厚子
一筋縄ではイキマセンナァ/加納三代

今どき学習ウォッチング
身に付く学習とは

このひと
竹中ナミさん(社会福祉法人プロップ・ステーション理事長)

きょうのキーワード
APWW(アジア太平洋女性監視機構)

事業レポート
2002年度「女性の学習の歩み」実践・研究レポート選考結果報告

なるほど!ジェンダー
あなたはなんて呼ばれたい?/イラスト:高橋由為子


巻頭言

川嶋瑤子

 時代の社会秩序、価値観が急激に根底的に変わろうとしているとき、抵抗は付き物である。ジェンダー関係は今、急激な変化の渦中にある。1999年に「男女共同参画社会基本法」が成立・施行され、地方レベルではこれまでに39都道府県83市区町で制定されたが、(2002.12.13現在 男女共同参画局把握分)、最近反動が強まっている。「個人の自由な選択、能力発揮を可能とする社会の形成」「性差別・偏見の撤廃」は抽象的な原則としては受け入れられても、より具体的な生活レベルでは、男女特性論の縛りはいまだに強く、伝統的な性役割を土台とする家庭、職場秩序の崩壊、既得権の喪失への恐怖は深い。

 現在の進展についてポジティブに考えれば、ある意味では、ジェンダーがいかに社会制度や意識の構成要素として深く広く作用しているかをすべての人に考えてもらう機会になるかもしれない。職場における性差別だけでなく、女性への暴力や性犯罪の増加、ポルノや買春による女性のセクシュアリティの搾取等々、我々の日常は重大なジェンダー問題で取り囲まれているにもかかわらず、これまで、ジェンダーの社会関係の分析視点は大衆メディアにおいてあまりに希薄あるいは縁辺的だったのだから。

 気になるのは、反対論者による論点のすり替えである。例えば、「性別にかかわりなく」は性差の解消になるとか、ジェンダー・フリーの行き過ぎだという。性差の完全否定を主張しているのではなく、性差がしばしば性差別的社会の中でつくられたものであること、そのような性差を理由として性役割の固定化や性差別が維持されていることを問題とし、その束縛からの解放をめざしているのである。ただ、ジェンダー・フリー、ジェンダー・ブラインド、ジェンダーレス、さらにジェンダーにセンシティブ(敏感)とさまざまな表現の混在が混乱を引き起こしている面もあるかもしれない。論点のすり替えをさけるためにも、またメディアによる正確な報道のためにも、ジェンダー・フリー概念の精緻化と一般への周知活動が必要であると思われる。

プロフィール
お茶の水女子大学客員教授,東京大学非常勤講師,国立大学協会「国立大学における男女共同参画推進報告書」を作成したワーキング・グループ委員。

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