実践コミュニティ

あるテーマについて関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を、持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団を「実践コミュニティ(Community of Practice)」と言う。ウェンガー,E(米)が1991年、徒弟制度の観察から導き出した概念。欧米企業が知識や情報そのものを管理するナレッジ・マネジメントに行き詰まり、知識を維持・向上させるためには人と人とをつなぐことが重要だと認識して導入するようになった。知識や情報をもつ人と人を組織を超えてつなぐことによって、言語や数値で表現できる知識(=形式知)と経験に根ざした主観的な知識(=暗黙知)の相互補完的な関係を発展させることができる。具体的な経験である信念や視線、熟練されたノウハウなどを通して情報がメンバーに内面化され、文脈を共有することで新たな知識の創造が可能となる。要件として以下の3つが重要とされる。①<領域>熱意をもって取り組む専門知識の分野があること ②<コミュニティ>人が同じ関心や熱心さでつながれる場 ③<実践(practice)>かかわり合いの中でなされた活動。この集団ではコーディネーターの役割が重要で、メンバー間の結びつきや信頼を築き、共通の関心や必要性に対する認識を高め、さらにメンバーが公的会議でも私的交流でも人脈がつくれるように労力と時間を惜しまない人であること、常に直面している問題を探り当て、領域に精通する素地を有すること、が必要とされる。この概念は、さまざまな団体・グループの組織の発展と構成員の育ちあいに役立つと注目され始めている。(2005.8)

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