ジェンダー予算

国または地方自治体の予算をジェンダーの視点から分析し、それが女性と男性にどのような影響をもたらしているのかを把握しようとするもの。北京行動綱領で「ジェンダー主流化」のための重要戦略と位置づけられた。ジェンダー予算の分析は、予算が現実にジェンダー平等政策を推進するように配分されているか、配分が既存の男女間の不平等を縮小する効果をもつか、ジェンダー平等社会の形成へ向けてニーズを満たす予算配分か、など政策・施策の査定・評価を総合的に行う。また、女性関連に特化した予算だけでなく、予算全体において、男女に公正かつ適切に配分されているかを分析するもので、次の3つの枠組みから分析される。①ジェンダー問題あるいは女性のために、特に割り当てられた支出(女性保健プログラムや男性向けDV相談など) ②公共サービスにおけるジェンダー機会平等確保に関連する予算(労働者のための保育サービスや育児有給手当など) ③女性と男性双方を対象とした一般的支出 政府自らが行う場合と議員や市民・NGOが政府活動を監視・批判するために行う場合があり、政府の内側と外側から透明性と説明責任を拡大する効果がある。政策の直接的効果だけでなく、副次的効果や波及効果、間接的費用も視野に入れ、基本的には過年度の実績評価を次の政策形成に反映させ、予算策定過程に影響力を及ぼすことをねらいとする。そのためにはジェンダー統計を含む情報量と社会的分析能力の蓄積が重要である。現在、約70ヵ国においてさまざまな態様により実施されているが、例えば、オーストラリア(政府実践)や南アフリカ(市民社会)の先行事例では、政府・官僚機構の中にジェンダーに敏感な視点を生み育てる効果が見られた。(2006.3)

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