ジェンダー法学

ジェンダーの視点から法的な現象を分析する法律学のことを総称して「ジェンダー法学」という。既存の法律学をジェンダー視点から批判し、性別を根拠とする社会的不平等のない新たな法律学を再構築しようとする試みである。法律における中立性・普遍性は自明の理とされている。しかし「ジェンダー法学」は、公私二分論(市民社会の公的領域=男性,私的領域=女性)を前提に成立した近代法が、女性を公から排除し、公における自由・平等の権利の享受を男性に限定するように機能してきたと批判する。つまりジェンダー法学からの問い直しは、これまでの法律学が、現実に生じている男女の差異や区別を当然のこととし、「男性中心主義」で成り立っていることを浮かび上がらせる。先ごろ国連女子差別撤廃委員会から、雇用の間接差別(コース別雇用管理は、結果的には低賃金のコースに多くの女性を追いやっている)の是正が勧告されたが、このことは労働法が「中心的な労働の担い手=男性」を前提にしていることと密接に関係している。2004年開校の法科大学院の中には「ジェンダー法学」の講座を開設したところもある。また2003年には、ジェンダーの視点からの法学研究を深め、研究と実務の架橋および「ジェンダー法学」に関する教育の開発を目的とする「ジェンダー法学会」も設立された。我が国の法学分野でのジェンダー問題への取組がようやく拓かれつつある。(2003.10)

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月刊『We learn』に1992年5月号から連載している「きょうのキーワード」を掲載しています。
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  • 解説文末( )内は、月刊『We learn』掲載年月です(情報はその時点のものです)。また、HP用に新たに取り上げた用語は「追加」としました。

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