出生前診断
出生前に胎児の異常の有無や程度、性別などを診断すること。検査には、超音波検査・羊水検査などの一般的なものから、より専門的なものとして絨毛検査、さらに胎児血採取・胎児皮膚生検など高度な技術が必要なものまである。また、母体血清マーカー検査(母親の血液検査だけで胎児の異常の確率がわかる方法)は、簡便に検査できることから普及しつつある。一方、検査の普及が、生まれようとする生命を軽んじる風潮を生み、優生思想につながるとの問題提起もなされている。1999年、「厚生科学審議会出生前診断に関する専門委員会」(厚生省)は、母体血清マーカー検査に対して、検査を積極的に勧めるべきではないとの見解を出した。出生前診断の是非をめぐっては、産婦人科医でつくる「日本母性保護産婦人科医会」が2000年3月、病気や障害のある胎児の中絶を容認する方針を打ち出した。これに対して、障害を理由にした中絶の合法化への動きであるという反発の声も強く、論議を呼んでいる。国連の調査によると、海外では、胎児の異常を理由に人工妊娠中絶が認められているのは190ヵ国中78ヵ国となっている。また、WHO(世界保健機構)は1998年に、出生前診断のガイドラインを出している。科学技術の進歩に伴い、今後さらに、さまざまな胎児に関する情報がわかるようになると予想されることから、出生前診断については社会的・倫理的問題として一層の議論が必要である。(2000.10)
月刊『We learn』に1992年5月号から連載している「きょうのキーワード」を掲載しています。
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- 解説文末( )内は、月刊『We learn』掲載年月です(情報はその時点のものです)。また、HP用に新たに取り上げた用語は「追加」としました。