キーワード・用語解説

社会的排除(ソーシャル・エクスクルージョン)

「社会的排除」とは、「福祉制度や労働市場等、社会のさまざまな領域において、その構成員の地位・資格を喪失すること」である。雇用からの排除が市民としての権利を縮小し、健康悪化を招き、家族・近隣関係も希薄にするというように、ある領域での排除が他の領域での排除を誘発するプロセスに着目する点に特徴がある。
 フランスで生まれた「社会的排除」は、戦後復興から取り残された人々の存在を問題化する概念だった。脱工業化とグローバリゼーションが顕著となった1980年代、若者の長期失業や不安定雇用など、新たな社会問題が生じ、それらを総称するキー概念として「社会的排除」は欧州全体に広がった。EUでは「社会的排除」の撲滅と、社会参加の可能性を保障する「社会的包摂」施策の推進を加盟国共通の目標に掲げている。「社会的排除」の調査も進み、若者、傷病者、障害者、母子世帯、退職者等が、明らかに高い確率で被排除者グループになると報告されている。
 日本では、1990年代に浮上したホームレスや格差など、新たな社会問題の背後に、排除の累積や連鎖があると言われる。「社会生活に関する実態調査」(国立社会保障・人口問題研究所2006)によれば、過去の不利な要因(離婚、解雇、傷病、15歳時の生活苦等)が、現在の「社会的排除」(生活必需品・住居・社会関係の欠如、社会制度への未加入等)に深く関連することが示された。(2009.8)

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