キーワード・用語解説

児童虐待防止法

2000年5月17日に成立した児童虐待防止法(正式名称:児童虐待の防止等に関する法律)は、児童(18歳未満)に対する虐待の禁止、児童虐待の防止に関する国および地方公共団体の責務、虐待を受けた児童の保護措置等を定め、児童虐待防止に関する施策の促進を目的として制定された。施行は2005年11月。児童虐待の定義を、同法では「保護者(親権を行う者)が、[1]児童の身体に外傷が生じ、また生じるおそれのある暴行を加えること [2]児童にわいせつな行為をすることまたは児童をしてわいせつな行為をさせること [3]児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食または長時間の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること [4]児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこととしている。この法律の特徴として挙げられるのが、児童相談所の権限・機能の強化である。児童相談所職員は虐待の恐れのある場合、虐待を受けている子どもの自宅などを立入調査し、警察官の援助を求めることができる。また、児童相談所長には、子どもと親の面会や通信を制限できる権限も認めている。児童施設職員、教師、医師、弁護士、保健師は、児童虐待の早期発見への努力義務と、発見した際の通告義務(児童相談所,福祉事務所等へ)が定められている。虐待した親は、児童福祉司による指導を受けなければならない。新たな権限行使に対して、児童相談所の人員不足や学校・保育所・地域との連携、弁護士や民間組織のサポートなどの必要性が課題となっている。(2000.7)

改正児童虐待防止法(2004年10月施行)
 厚生労働省による2003年度「児童相談所における虐待に関する相談処理件数」26,569件と、統計を取り始めた1990年度(1,101件)の24倍超に激増する中、第1回の改正が行われた。1)法の目的に「(児童虐待は)児童の人権を著しく侵害するもの」と明記 2)児童虐待の定義を見直し、保護者以外の同居人による同様の行為(保護者によるネグレクトの一類型)、児童の目の前でDVが行われる等間接的な被害も児童虐待とする 3)児童虐待を受けたと「思われる」児童も通告義務の対象とする 4)児童相談所長・都道府県知事の必要に応じた適切な警察署長への援助要請等を義務とする等。(2008.4追記)

改正児童虐待防止法(2008年4月施行)
 虐待の早期発見・対応が中心で、虐待予防、虐待を行った保護者への指導などが不十分だったことから、2007年5月、1)児童虐待のおそれのある保護者に対する都道府県知事による出頭要請の制度化 2)一定の手順を踏み裁判所の許可を得た上での強制立入を認める 3)児童相談所長等による保護者に対する面接・通信等の制限強化 4)都道府県知事による児童への接近禁止命令制度の創設等、行政の取組を強化した改正法が成立した。(2008.4追記)

 なお、児童虐待への対応を強化するため、2011年5月「民法の一部を改正する法律」が成立、親権停止制度が新設された。2年以内という期限つきで親権を停止させる。これまでは、親権全部を無期限喪失させる親権喪失制度のみだったため、申請も審判も慎重にならざるを得ない状況があった。このため民法自体を見直す必要性が指摘され、改正するに至った。親権を理由に児童虐待を正当化したり不当な主張をする親権者への対処に、有効に機能することが期待されている。(2011.11追記)

改正児童虐待防止法(2020年4月施行)
 2019年6月19日成立。2020年4月施行。正式名称は、児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律。2000年5月に成立した児童虐待防止法が2004年と2008年に改正され、今回は3回目となる。主な改正点として、「親権者がしつけとして体罰を与えることを禁止」しているほか、虐待が疑われる保護者との関係性を保つため「児童相談所で一時保護など介入対応をする職員と、保護者支援をする職員をわける」、子どもの権利を守るため「学校、教育委員会、児童福祉施設の職員に守秘義務を課す」、DVと虐待が同時に行われている場合を考慮して「DV対応機関との連携」、加害者に対して「虐待した保護者に医学的・心理学的指導を行う」などが挙げられる。一方で、親権者以外の交際相手などが規定されておらず問題を残していることや、「監護及び教育に必要な範囲内で懲戒できる」とある民法の懲戒権を改正に合わせてなくすべきという意見に対し、本来親が行うべきしつけができなくなるとの反対もある。(2019.11追記)

参考:
厚生労働省「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律(令和元年法律第46号)の概要」
東京都「児童虐待防止キャンペーン」

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