月刊 We learn バックナンバー

バックナンバー一覧

2004年5月号(No.619)

  • 巻頭言:憲法の精神を、守るだけではなく、世界に広める/折井美耶子
  • 誌上アートギャラリィ:フォトエッセイ Jigsaw Puzzle 20/落合由利子
  • 研究レポ−ト:ジェンダ−とディストレス−メンタルヘルスに見られる性差/稲葉昭英
  • 学習情報クリップぼ〜ど:第二の人生設計−寄りかからず寄り添い/鶴ヶ島市女性センタ−
  • シネマ女性学:『カレンダ−・ガ−ルズ』
    イギリス映画(108分)/ナイジェル・コ−ル監督
    大人気!中高年ヌ−ド/松本侑壬子
  • 活動情報(1):当事者による、当事者のための自立支援−ワ−キング・ママのつどい/室山千春
  • 活動情報(2):倶楽部「井戸端」に寄せる思い/荒井かぎ子
  • Women's View:
    ジェンダ−・フリ−保育プログラム(出会いから)/杉原幸江
    やる気を表す仕事着/伊永陽子
  • 今どき学習ウォッチング:参加者と講座のミスマッチ
  • このひと:丸山妙子さん(宮代町「ときめきスタッフ」メンバ−)
  • きょうのキーワード:グリ−ン・ツ−リズム
  • 資料情報:平成15年版働く女性の実情(女性労働白書)
  • なるほど!ジェンダー:世帯単位が自立を阻む?/イラスト:高橋由為子

巻頭言

憲法の精神を、守るだけではなく、世界に広める

折井美耶子(おりいみやこ)

 「あたらしい憲法のはなし」という小さな本が、文部省によって発行されたのは1947年8月で、全国の中学生が教科書として学びました。私はその本を出来たての新制中学1年生のとき、リアルタイムで勉強しました。その少し前まで国民学校の生徒として「鬼畜米英」「撃ちてしやまむ」と教えられたのですが、敗戦と同時に教科書の戦争に関する部分には墨を塗らされました。子ども心にも価値観の激変にとまどっていたときでしたが、この本の説く憲法の精神―「民主主義」と「国際平和主義」と「主権在民」には、何か新しいキラキラとした未来を感じました。憲法第九条については、「よその国と争いごとがおこったとき、けっして戦争によって、相手をまかして、じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめたのです」「日本は正しいことを、ほかの国よりさきに行ったのです」と書いてあります。この本は今読んでも「あたらしい」と思うのです。
 しかしその憲法が自衛隊のイラク派兵によって堂々と破られてしまっています。そしてこの「憲法違反」を「合憲」にするための憲法改悪が具体的な日程にのぼろうとしています。憲法制定後約半世紀、私たちは曲がりなりにもこの憲法を守り続け、他国への侵略に加担しないできました。21世紀こそは平和の世紀と望んだにもかかわらず、世界は戦争と暴力に満ちています。平塚らいてうはかつて「憲法を守りぬく覚悟」と書きましたが、今は守るだけでなく、世界に広め、この精神を人類的規模にすることが大切ではないでしょうか。「あたらしい憲法のはなし」を学んだかつての中学1年生はそう考えます。

プロフィール
1935年東京生まれ。女性史研究者。社会教育や大学で、女性史や女性問題などの講師を務める。世田谷、新宿などの地域女性史編纂にあたる。主著に『薊の花』(ドメス出版)、『地域女性史入門』(ドメス出版)、共著『青鞜人物事典』(大修館書店)、『日本女性生活史近代』(東京大学出版会)など。近著に「戦争と女性―ジェンダーの視点から」『戦争と現代2』(大月書店)。

いまどき学習ウォッチング

参加者と講座のミスマッチ

 男女共同参画社会基本法が制定されて以来、男女共同参画社会づくりに向けた学習がいろいろな場へ広がりを見せ始めている。参加してくる人たちも高齢化社会を反映してか、定年後の男性が増えてきている。それはそれでよいことだが、参加者のニーズと講座のめざすところが全くズレていることがある。
 参加動機を聞いたところ「家の中に引きこもっているとぼけるので、ぼけ防止に」とのこと。そして現役時代の自身の経験を延々と披露するなど、学習の流れに乗ってこない。参加者を確保したい主催者側の思いもわかるが、学習を実りあるものにするためには、参加者と講座のミスマッチをできるだけなくしたいものだ。まず参加目的の確認をして参加の可否を決めるなど何らかの工夫が必要なのではないだろうか。
 一方リタイア後もエネルギーに満ちあふれ、自分のもっている能力を磨き直して社会の中で役立ちたいと願っている人たちも多い。そういう人たちには、男女共同参画の視点をもって地域づくりに参加してもらえるような講座の充実を図っていきたいものである。

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