月刊 We learn バックナンバー

バックナンバー一覧

2004年2月号(No.616)

  • 巻頭言:ことばを生きる・ことばで結ぶ/はせみつこ
  • 誌上アートギャラリィ:フォトエッセイ Jigsaw Puzzle 17/落合由利子
  • 研究レポート:「なんてこった!」のスポーツ界―女性アスリートたちへのセクシュアル・ハラスメント防止をめぐって/山田ゆかり
  • 学習情報クリップぼ〜ど: 女性の政策決定参画セミナー/鳥取県男女共同参画センター
  • シネマ女性学:『TAIZO』
    日本映画(90分)/中島多圭子監督
    「夢追うカメラマンに魅せられて」/松本侑壬子
  • 活動情報(1):男女平等社会を目指し、草の根活動にチャレンジ!/大川長子
    「ポスト日本女性会議2001みと」誕生
  • 活動情報(2):「ひらつか男女共同参画フェスティバル」の10年とこれから/濱野弘子
  • Women's View:
    進歩する男性?とまだまだな女性?/辻野朋子
    みんなに理解してもらうために/斎藤洋美
  • 今どき学習ウォッチング: 「遅刻」の意味するところ
  • このひと:子育て・女性健康支援センターいわて「七ばんめのポッケ」代表、佐藤ムツさん
  • きょうのキーワード: デートレイプ
  • 資料情報:女子差別撤廃条約選択議定書批准促進集会決議
  • なるほど!ジェンダー:“母親の手作り”が子どもには一番?!/イラスト:高橋由為子

巻頭言

ことばを生きる・ことばで結ぶ

はせみつこ

 生きとし生けるものの中で、人間だけが“ことば”をもっています。“ことば”は人と人との間を行ったり来たりしながら、人間たちを繋いでいます。“ことば”には、読み書きの文字によるものと、聞きしゃべるの声によるものとの二つの側面があります。でも私は“ことば”のルーツはまず、聞きしゃべるの声のやりとりが原点だと思います。人間同士が向き合い、目と目を見交わし、ことばをキャッチボールのように、投げかける、受け取る、投げ返す、受け止めるの繰り返しではないかと思うのです。でも人間は一人だって同じ人はいません。一人ずつ、それぞれ、年齢、性別、性格が違うし、外国人同士なら言語も異なります。よほど注意しないと、“ことば”は逸れたり、行き違ったりして相手に届きません。だから、音声、表情、手振り身振り、身体ぐるみの表現が必要ですし、そしてこれで相手に届くかしらという思いやり、想像力が必要です。ところが今、私たちの周りを取り巻いている印刷物やコンピュータから打ち出されてくる膨大な言語は、紙面や画面に貼り付けられた一方通行のもので、そのとき、人と人の間に息づく生きた“ことば”ではありません。
 今、世界中を縦横に飛び回り人々をつなげるインターネットの言語は、たしかにネットワークの輪を広げ、多くの出会いや交流をはかっています。そういう現在だからこそ、私たちは身体と心をむすぶ、生きた“ことば”について思いをめぐらし、日々新たに“ことばを生きる”必要があると思います。
 人と人の間を行き来する“ことば”が生き生きしていれば、人間が共存する結び目になってくれる筈です。もともと“ことば”は人と人を結ぶために人間たちにあたえられたのではないでしょうか。

プロフィール
ことば・パフォーマー。1983年より現在にいたるまで毎年“ことば”を素材にして構成したパフォーマンスをシアターX、さいたま芸術劇場、新国立劇場などで自作自演。「やってきたアラマせんせい」は全国巡演13年、「スーパー・AIUEO」は9年のロングラン。2000年11月カナダ横断公演ツアー、2002年・2003年アメリカ西部巡演。1993年から6年間NHKTV「あいうえお」にレギュラー出演。2003年NHKTV芸術劇場出演。2001年4月よりThe Japan Timesに「Word Play」を連載中。

いまどき学習ウォッチング

「遅刻」の意味するところ

 現在は仕事に市民活動に大活躍している女性だが、20年以上前女性センターの講座に参加し始めたころの出来事をいまだに感動的だったと語る。雪の降り積もった朝、講座生の一人が雪かきをしていて遅刻してしまった。ふつう「たいへんだったね」と、ねぎらいの言葉をかけてもらえると期待するが、講師は「なぜあなたは遅れたのか」、さらに答えに窮している講座生に「夫や子どもは遅刻しなかったでしょ」と言ったのだそうだ。そばで聞いていた彼女は、「そんなこと言えないし、言うもんじゃない」とこれまでずっと抑えこんでいた自分に気づいた。「言ってもいいんだ」「時間はつくれる」とも思ったそうだ。
 家事は際限がない。ちょっとくらい遅れたって大したことないと思う気持は、自分のための時間を侵食していく。「やはり今は自分のしたいことより家族が優先、我慢は仕方ない」と今の暮らしを変えようとしないならば、講座は単なるガス抜きの場になってしまう。自分の抱える問題に気づき、変化の一歩を踏み出すパワーを得られる、そういう講座をつくるためには、講師や職員の姿勢が問われる。今に通じる話である。

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