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選択的夫婦別氏制度

選択的夫婦別氏制度は、婚姻の際、夫婦の氏を同氏とするか、別氏とするかを選択できる制度である。現行民法の家族法は1947年改正で「家制度」を廃止し、夫婦の氏に関して第750条で「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と規定している。互いの合意により選ぶので形式上は男女平等だが、法制上の夫婦同氏は、実質上の「家制度」温存につながりかねない。人口動態統計(厚生労働省)によると、夫の姓を選ぶ傾向が依然として高く(1975年98.8%→2006年96.3%)、実際には女性の改姓がほとんどである。
 一方、核家族化や少子化、ライフスタイルの変化等により家族のあり方は多様化している。女性の社会進出があらゆる分野で進み、改姓によって職業・社会活動上の実績が断絶する等の不利益も憂慮されている。
 選択的夫婦別氏制度導入に向けた法改正については、女子差別撤廃条約批准(1985)を受けて議論が活発となり、1996年法制審議会が「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申したが法制化できなかった。
 男女共同参画社会基本法成立(1999)を受けて策定された男女共同参画基本計画(2000)では、「男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し」において選択的夫婦別氏制度の導入について引き続き検討するとされた。翌年設置された男女共同参画会議の下で、基本問題専門調査会が選択的夫婦別氏制度を取り上げて審議し、「中間とりまとめ」(2001)の中で民法改正への期待を表明、第2次男女共同参画基本計画(2005)でも国民の議論が高まるよう努めると明記されたが、いまだ成立に至っていない。
 内閣府の世論調査(2006)では、法改正に賛成36.6%、反対35.0%と拮抗しているが、女性の20代~50代では法改正を求める人が4割を超えた。2009年CEDAW(国連女子差別撤廃委員会) は日本政府の第6次報告書(2008)に対する最終見解の中で、世論に依拠せず国内法を整備するよう勧告した。
(2010.1)

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