月刊 We learn バックナンバー

バックナンバー一覧

2002年1月号(No.591)

  • 巻頭言:「今」だからこそ求められる女性の感性/大石芳野
  • 研究レポート:自治体の女性広報誌発行の現状と担当者の意識/田中和子ほか
  • 学習情報クリップぼ〜ど:「男女共同参画テーマ別講座―[働く]を考える」(福島県男女共生センター)
  • シネマ女性学:『インティマシー/親密』
    フランス映画/監督
    性愛による癒しの夢/松本侑壬子
  • 活動情報(1):自分らしくいられる場所を
    グループホーム「陽だまり」の活動/岩楯堪子
  • 活動情報(2):メディアの中のジェンダーに気づこう
    「メディア・リテラシー講座」を企画・実施して/森山京子
  • Women's View:
    選挙制度から見えてきた問題−参議院議員選挙をふり返って/長濱和代
    太陽のように輝いて/板橋和子
  • このひと:長澤治枝さん(読書アドバイザー)
  • きょうのキーワード:デジタル・デバイド
  • 事業レポート:2001年度「女性の学習の歩み」実践・研究レポート選考結果報告

巻頭言

「今」だからこそ求められる女性の感性

大石芳野(おおいしよしの)

 戦争の世紀とも言われた20世紀を超えて、いのちを尊ぶ時代を期待した。というよりも、決意のようなものを抱いた。けれど、「同時多発テロ」を受けて以来、吹き飛んでしまった。
 米・英軍による報復の爆撃が始まり、アフガニスタンの人々が恐怖(terror)にさらされた。世界中の視線の中で、彼らはいのちを奪われ削られている。
 今、私たちは「テロ(terrorism)」に巻き込まれることを恐れて、海外旅行も差し控えている。けれども、今回の事態は本当に「突然」のことだったのだろうか。
 1979年の旧ソ連軍による侵攻以来、20年余り、アフガニスタンの人々は戦禍に見舞われ、女性は虐げられてきた。しかし、私たちは、一部の人たちを除いて国際社会もろとも無視と差別を繰り返した。屈辱感がテロ行為とも結びついていくことを感じながらも、知らないふりをしてきたのではなかったか。
 とすると、「テロ」も「報復のアフガン戦争」も、決して突然ではなかったとも言える。
 長い歳月の中で熟されていく人間の怨念を、早期に取り除くためにはどうしたらよいのだろうか。多分、そのためには、私たち女性の柔らかな感性が大いに役立ちそうだ。一口に女性といってもさまざまだが、平和を求める気持はより強いと思う。男性社会への遠慮をなくし、偏見を払拭し、心を沈めながら深く考えると、いのちを弄ばれている人たち、とりわけ女性や子どもたちの姿が見えてくる。
 女性だから考えられること、できること、つながっていけることなどを、こんな時代だからこそ極めていきたいものである。

プロフィール
1944年東京生まれ。大学卒業後、ドキュメンタリー写真に携わる。写真集『夜と霧は今』『沖縄に活きる』『HIROSHIMA 半世紀の肖像』『カンボジア苦界転生』『ベトナム凛と』他。エッセイ集『沖縄若夏の記憶』『小さな草に』『あの日、ベトナムに枯れ葉剤がふった』他。芸術選奨文部大臣新人賞、日本ジャーナリスト会議奨励賞、日本写真協会年度賞、児童福祉文化賞、土門拳賞などを受賞。

ENGLISH サイトマップ キーワード・用語解説