キーワード・用語解説

ハーグ条約

正式名は「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」。国際結婚が破綻した際に、夫婦の一方が配偶者に無断で国境を越えて子(16歳未満)を連れ去り、トラブルとなった場合の解決規定を定めている。国際結婚の急増に伴い、離婚後の子の奪いあいが国際問題化する中、1980年制定された。子を元の居住国へ返還することを原則とし、締約国は中央当局を設け、申し立てを受けた場合は、子の所在発見、情報交換など、子の迅速な返還のため関係国と協力体制をとらねばならない。
 現在、先進国を中心に80ヵ国以上が加盟している。日本は未加盟だが、日本への子の連れ去りの増加で、加盟を求める欧米各国の圧力が年々強まっている。
 国内では、日本人の親が子を母国に連れ帰る背景にDVや生活苦の可能性が指摘され、子の返還には慎重論が根強い。また日本は離婚後一方の親が親権者となる単独親権制度をとるが、離婚後も父母共に親権者となる共同親権制度をとる国も少なくない。外国で親権を争えば、制度上の違いから不利な立場に立たされ、子の養育に大きな制約を受けるという見方もある。
 一方、日本から子を連れ去られた親は、個人で行えば困難を伴う返還交渉を、中央当局を通して行えることになり加盟のメリットは大きい。子の返還を原則とする条約への加盟が、子の連れ去りそのものへの抑止力になることも期待されている。
 ハーグ条約は子にとっての最善の利益を優先し、子の安全や意志を考慮して、返還義務を拒絶できる例外規定も設けている。(2011.4)

 日本政府は条約加盟の方針を固め、条約実施のために策定される国内法に子の返還拒絶事由を盛り込む骨子案を閣議で了解。2013年5月、参院本会議全会一致可決をもって、両院で条約加盟を承認した。関連法案の成立、必要な政省令の制定などを経て、2014年1月に署名、同年4月1日から発効した。(2014.4追記)

月刊『We learn』2017年5月号<学びのスイッチ>には、棚村政行さん(早稲田大学法学学術院教授)の解説を掲載しています。(ご購入はこちらから

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