キーワード・用語解説

トラフィッキング

犯罪組織などが性的搾取、強制労働、臓器提供などを目的として行う「人(特に女性と児童)の密輸trafficking in persons)」、いわゆる人身取引(あるいは人身売買)のことをいう。1980年ごろから深刻な移民問題、フェミニズム運動、児童の権利運動、組織的犯罪の複雑化、観光の増加、HIV/エイズの蔓延など国際的潮流により、トラフィッキングは女性への人権侵害・暴力の問題として注目されるようになった。第4回世界女性会議「行動綱領」(1995年)で戦略目標とされ、国連の第29回女子差別撤廃委員会(CEDAW)最終コメント(2003年7月)では、日本政府は問題の範囲・程度に関する情報把握が不十分であり、被害者に関する詳細なデータを収集するなど取組の強化が勧告された。性的搾取の被害者となる女性・女児に対して雇用者は、立て替えた旅費、滞在費用、書類などの手数料に高額な利息を上乗せし、返すまで無給で売春などを強要する。常時監視し、孤立させ、逆らえば国の家族が報復を受けるという恐怖心をうえつけ、パスポートや書類を没収して逃亡できなくさせるなどの実態がある。送り出す側の要因には、貧困や女性・女児の社会的地位の低さ、政情・経済不安、間違った情報、周囲や家族からの圧力などがある。日本が受け入れ天国と言われるのは、性関連のサービス産業及び児童との性行為に対する需要があり、買春を男性的ふるまいと是認する伝統や文化が更に助長するためである。被害者への支援体制や取締りのための法整備も遅れているが、問題解決へ向けてまず、広く市民の認識を高めていく必要がある。政府は2004年12月に人身取引対策行動計画を策定するとともに、関係法令の改正等の施策を進めている。(2004.4)

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